●レスリー・チャン映画 知られざる52の秘密 花絮篇(こぼれ話篇)

-レスリーを余り知らないあなたへ 彼は香港映画に多大な貢献をした-

1、 セックス・シーンを監督する-レスリー、監督への夢

レスリーには監督になりたいという夢があった。早くは1982年、《衝撃21》の記者会見で、自分で出資し撮影したい。脚本も出来ていて、自作自演するつもりだと語っている。当時彼がすぐに監督になることは叶わず、チャンスを見つけては試してみるだけだった。例えば《男たちの挽歌》でジョン・ウーが“台湾の警視”で出演するアップのシーンは、レスリーが撮ったものである。80年代末に香港楽壇を引退し、カナダで映画を学んだのも、監督になるためだった。

それでもレスリーがなかなかスクリーンの後ろへ回ろうとしなかったのは、ウォン・カーワイとレイモンド・ウォンという2人の親友と関係がある。2人はカメラの前でそれだけすばらしく、また人気もあるのだから、まだ幕の後に下がらないで欲しい。製作は後でも出来るからと説得した。レスリーはこの意見を容れて、レイモンド・ウォンらの作品に出演し続けた。

96年に《色情男女(夢翔ける人 色情男女)》で若い監督を演じた時、イー・トンシンはレスリーに、チョイ・ガムコン(徐錦江)とスー・チー(舒淇)のセックス・シーンを撮影させた。水を得た魚のレスリーは、監督・編集・音楽全てに手腕をふるった。BGMに親友のフェイ・ウォン(王菲)の《不安》という曲を使い、場面は美感に訴え、幻想的な効果を上げている。興味があったら見て欲しい。この数分間は映画全体とスタイルが違っていると分かるだろう。

演技、監督、編集、音楽。イー・トンシンがレスリーは期待以上だと言ったのも分かる。《色情男女》のエンディング・ロールにも“ゲスト監督 張國榮”の文字が出ている。

また同年の《金枝玉葉2(ボクらはいつも恋してる!)》では時間が差し迫っており、ピーター・チャン、レスリー、エリック・ツァンの3組に分かれて撮影した。だからエンディング・ロールを注意してみると、レスリーには“助監督”の肩書きもある。

2000年レスリーは、スターを集めて反喫煙促進映画《煙飛煙滅》を撮った。30分の作品である。他にもMVを撮影し、“張國榮作品”と明示している。

実際レスリーは、数多くの作品を監督する予定だった。私が知るだけで、90年代には《愛奴》《林鳳傳》。2000年には“Dream League”を設立し、撮影に備えた。陳慶嘉を脚本に据え、奚仲文を美術監督にした。また《深喉》と《家春秋》の計画では、“創意聯盟”で合作したジェイコブ・チャンが、自らレスリーに「僕が助監督になろう」と言った。

しかし監督になる夢は、思うようには行かなかった。またレスリーが映画を熱愛するゆえの困難もあっただろう。彼はこう語っている。「香港の出資者と話をすると、いつも“ひとつのビジネスに過ぎない”という感じを受ける。僕は商売をしようというのではない。すばらしい作品が撮りたいんだ」

2002年、レスリーは《異度空間(カルマ)》に出演後、正式に《三少爺的剣》出演を辞退し、自分の第一作目に取り掛かった。出演者はレスリー、ニン・チン(寧静)、リディア・サム。製作スタッフも強力でワダ・エミが衣装、ウィリアム・チョンが編集、区丁平が美術指導。作品名はとりあえずの所”Project L”だった。

2、 レスリー映画作品のオリジナル・タイトル

《烈火青春》―《反斗幇》《楊過與小龍女》―《英雄門》
《求愛反斗星》―《愛情無面俾》《為你鍾情》―《求愛敢死隊》
《偶然》―《紫色的玫瑰》《英雄本色》―《誰可相依》《英雄故事》《兄弟情》
《星月童話》―《星月盟》《春光乍洩》―《布宜諾斯艾利斯事件》
《流星語》―《黐頭芒》《槍王》―《冷鷹》
《恋戦沖縄》―《假日刑警》《異度空間》―《幽霊日記》

3、《家有囍事(ハッピー・ブラザー)》で女っぽい役に志願

レスリーがテレサ・モウに恋していた事は、とっくに知れ渡っているが、2人がこれほど良い友でいられるというのも、なかなか無いことだ。テレサ・モウがレスリーにインタビューしたテレビ番組を見たが、寝転んでおしゃべりしており、とてもほのぼのした場面だった。《家有囍事》で2人は結婚している。

作品での女っぽい役は元々、出資者のレイモンド・ウォンが自分で演じるつもりで、レスリーは白馬の王子的な役だった。しかしレスリーは脚本を読むと女っぽい役に興味津々で、自分に挑戦させて欲しいと言い、役を奪い取った。

女形の役は正月映画《八星報喜(僕たちは天使じゃない! )》でチョウ・ユンファが挑戦している。レスリーは愛嬌があって、しかも嫌味の無いように、上手く演じている。もともとのプレイボーイ役はもう演じ飽きていて、挑戦したいと言ったのだ。テレサ・モウはこれを見て、自分が男勝りを演じるといった。ジョージ・ラムは自宅が火事にあったためと辞退したが、実際には徳寶公司が他社の作品への出演を許さなかったのだ。そこでレイモンド・ウォンは800万HKドルでチャウ・シンチーを起用する事になった。

4、 6,500 HKドルで、騙されてポルノ作品に出演

《紅樓春上春》はレスリーの初出演作だ。呉思遠がレスリーに賈寶玉を演じさせたの は慧眼だった。6,500HKドルというのは、当時のレスリーにとっては最高報酬額の仕事だった。呉思遠はこれはコメディだと説明し、主演女優は黄杏秀(陳百祥の妻)で、レスリーは喜んで出演を受けた。結果、撮影の日になってこの作品にはポルノシーンが多いと分かった。レスリーは後でこう語っている。「ベッド・シーンを撮る時、心臓もドキドキして、本当にどうして良いか分からなかった。でもお金をもらった以上、演らない訳にはいかない。今後は、脚本を見てから決めよう思った。笑われるのが怖かった!」

後にジェームズ・ウォン、陶傑、李碧華、リー・ハンシャン(李翰祥)等香港の著名人が、レスリーは曹雪芹の筆になる賈寶玉にとても良く似ていると言っている。

その後レスリーと呉思遠は《豪門夜宴》で合作しただけだ。その他、カリーナ・ラウのヌード写真事件で、呉思遠らは《東周刊》排斥キャンペーンに参加している。

 
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