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●レスリー・チャン映画 知られざる52の秘密 内幕篇-レスリーを余り知らないあなたへ 彼は香港映画に多大な貢献をした- 1、 アニタ・ムイも《東邪西毒(楽園の瑕)》に出演していた レスリーは《楽園の瑕》を非常に気に入っており、出演者としての役割以上の事もしている。彼は《覇王別姫》の撮影を通じて、中国とヨーロッパに人脈を持っていた。そこで《楽園の瑕》が資金に事欠いて途中で挫折しそうになると、各地の業界人に連絡を取り、2箇所から資金をかき集めて作品を救った。レスリーが良い作品の為に身銭を切るのも、初めてのことではない。 早くには90年の《欲望の翼》の時で、撮影後半には予算が厳しくなり、フィリピンでウォン・カーワイがヘリコプターで列車を追う映像を撮りたいと考えても、先立つ物がなかった。するとレスリーは言った。「撮りたいなら、僕がお金を出そう。」結果ヘリは借りたものの、強風の為に撮影は上手くいかなかった。そしてウォン・カーワイはお金の事は言わなかった。 また《楽園の瑕》の撮影終盤になって、レスリーとウォン・カーワイはある役がアニタ・ムイにぴったりだと思った。そこで親友が一日ゲスト出演してくれるように説得した。アニタ・ムイは軽々しく出演を了解する人ではなく、出演は全てレスリーの顔を立てるためだった。そしてこれは、レスリーが出資者の蔡松林の利益を考えての事だった。 しかし結局ウォン・カーワイは、ジョイ・ウォンの出番をほんの少ししか残さず、(特別版に数秒出ている)アニタ・ムイも、全くスクリーンには出ていない。今年(08年)の新編集バージョンでも影も形もなかった。 2、 大変更の真相-東邪、西毒は初め女性だった レスリーは《楽園の瑕》の一番の主役で、西毒こと欧陽峰を演じている。しかし当初、西毒はレスリーではなく、それどころか女性だったのだ。 ウォン・カーワイとジェフ・ラウが練った《楽園の瑕》は奇抜な発想で、ブリジット・リン(林青霞)とジョイ・ウォンが東邪と西毒が演じる物だった。しかしすぐにキャストは大変更され、レスリー、トニー・レオン、レオン・カーファイ、ジャッキー・チュン、ブリジット・リン、マギー・チャン、カリーナ・ラウ、ジョイ・ウォン(後にチャーリー・ヤン(楊采妮)に交替)という陣容になった。そこでレスリーが東邪・黄薬師、トニー・レオンが西毒、レオン・カーファイが南帝、マギー・チャンが慕容公主に替わった・・・。 また撮影は非常にスロー・ペースで、どうしても期限には完成せず、早急に間に合わせるには、別の方向から攻めるしかなかった。そこでジェフ・ラウに交代し、同じスタッフで正月映画《東成西就(大英雄)》を撮影した。そのためにコメディー《大英雄》は《楽園の瑕》の原型を良く留めている。 《大英雄》の撮影に入った事で、ウォン・カーワイには考える時間が出来た。ウォンは考えた。レスリーが“東邪”をやる事は何も目新しくない。《欲望の翼》で風流洒脱な姿を見せているから、東邪では同じ事の延長になる。一方西毒は“コンプレックスを抱え、傷つけられたくない”という人物で、レスリーはまだ演じた事がなく、新たな挑戦である、と。そこで東邪から西毒に変えた。他のキャストの変更もここから来ている。トニー・レオンは盲目の剣士、レオン・カーファイは東邪・黄薬師、ブリジット・リンは人格の分裂した慕容嫣と慕容燕で、マギー・チャンは欧陽峰の嫂に・・・。 キャスト変更で一番気の毒なのはジョイ・ウォンだ。彼女は非情にもお役御免となり、彼女とレスリーのシーン、ラブ・シーンも全て編集された。《楽園の瑕》の資金が行き詰まったのは、このキャストの大変更が大いに影響している。レスリーはブリジット・リンにこう言った。「30日分の演技が、全部パーになった」 3、《英雄本色Ⅱ(男たちの挽歌2)》と《倩女幽魂(チャイニーズ・ゴースト・ストーリー)》のレスリーの役が、これほど人に好かれる理由 《男たちの挽歌2》と《チャイニーズ・ゴースト・ストーリー》は共に1987年の作品だ。見てみると、レスリーがとても好かれる役と分かるが、これは意図しての事だ。では何故、この何も関連のない作品で、共に人好きがする役なのだろうか? 事情の経緯は1年前にさかのぼる。1986年レスリー、チョウ・ユンファ(周潤發)、ティ・ロン(狄龍)が主演した《男たちの挽歌》は、全香港を沸かせた。しかしレスリーの役は余りにも嫌なヤツで、観客にも冷たい目で見られた。レスリー本人が気にしていなかったとしても、彼は笑って言ったのだ。「これは観客に罵られる役。もし見て僕に怒鳴らなかったら、それは僕の演技がまずいんだ。」しかしの熱中の余り、レスリーを嫌う人も多かった。 監督のジョン・ウー(呉宇森)とツイ・ハークはこれでは申し訳ないと考え、それぞれ、次の作品ではレスリーを良い役にすると言った。そこで翌年、ツイ・ハークは《チャイニーズ・ゴースト・ストーリー》でバカ正直で単純で、どうしようもなく可愛い書生・ニン・チョイサン(寧采臣)にレスリーを起用し、ジョン・ウーは《男たちの挽歌》の続編で脚本を大きく書き変え、“キット(傑仔)”の性格を新たに、心の琴線に触れるものにした。 とはいえ役が観客に愛されるのはレスリーの絶妙な演技ゆえだ。そうでなければ、監督が何をお膳立てしようと無意味だ。 |
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